父への電話
父に電話をした。
ピースボート通訳ポジションに合格し、「これで父と一緒に世界一周やー!!!」と勝手に意気込んでいた私。
そういえば父に私の壮大なる妄想を伝えていなかったことに気づく。
でもきっと娘と一緒に世界一周に行けるなんて、父親としては嬉しすぎるだろう。と心のどこかで思っていた。
完全なる親孝行偽善者であった。
高まる気持ちで父に電話をし、「世界一周に娘と船で一緒に行こう!!」と伝えたところ、「僕は行きたくない。家が1番快適だし、外には出たくない。」と返ってきた。
娘、衝撃。
あれ?
ん?
思考回路停止。
でも父はパートナーを失ってから約2年間、ほぼほぼ家に引きこもっていて、LINEもやり取りをしていても大体、母を亡くして寂しいという言葉が出てくる。
そんな状況が2年続いて、精神的にも良くないし、どうにか外に連れ出したいという気持ちが私にはあった。
ということで、父が煮え切らない様子だったので、私が父の分の参加費を振り込んだ。
150万円
ちゃりーん。
というより、ネットバンキングなので、ワンクリック。
もうこれで私も後には下がれない。
こっちの気持ちの方が当時は大きかったかもしれない。仕事を辞める踏ん切りが中々つけなかった自分の背中を押すために、振り込んだようなものである。
振り込んだ瞬間のスッキリ感というか、これでいいんだという言い聞かせた感というか。不思議な感情であった。
新卒で入って、8年勤めた会社を辞める踏ん切りは、ネット振り込み。
なんか21世紀らしい、といえばらしい終えかた(笑)
父には電話で、『振り込んでおいたから!パパの分!』と伝え、これでようやく一歩踏み出せて気がした。
この踏み出したことが、本当に正しい選択だったかどうかは分からないけど、やりたいことやらずに人生を終わらせちゃうのはもったいないという気持ちが先走って、ほぼほぼ衝動に駆られた行動を取った。
父との世界一周の旅が、始まった。